[論説]結局空想国会とは何だったのか

 "空想国会"この単語が聞かれなくなってから随分と時間が経ったように感じる。コロナ禍に生まれた学生を中心としたインターネット模擬政治の試みは、ついぞ政治の負の側面をひたすらに露呈しつつ消滅した。
 空想国会とは何だったのか。極端な話、これの問いに対しては「学生による政治ごっこ」という解答が正しく、さらに言えば「悪ノリオタクがキッズをバカにする最悪な治安のコミュニティ」みたいなものだったが、敢えて今回はそのコミュニティに価値を見出していきたい。
 というのも、空想国会なき今、かつてあの組織にいた人の一定層は政治分野で自らの意見を発信し、それなりに新たな活路を見出しているものもいれば、他方で現実の政治が先述の"負の側面"を露呈するようになったからである。
 空想国会亡き後、一部の人は自前の政治団体を立ち上げ、或いは政治について語り合うコミュニティを整備するものもいた(因果関係があるとは一概に言えないが)。これらの団体やコミュニティの中には、空想国会に参加していたとは思えないような建設的な議論をするところもあり、目を見張るばかりだ。
 仮にこの団体やコミュニティの成立が、空想国会の消滅と因果関係がなかったとしても、そこに参加したメンバーの中には空想国会時代に知り合い、その関係で参加したというケースが多く見られる。そういう点では、空想国会は「政治について語る同好の志」を発見する場としては機能したのかもしれない。
 特にあそこは中高生の参加が多く目立っていた。政治に興味を持たない若年層が多い中、(たとえ入り口が空想国会だったとしても)結果的に政治にアンテナを張るようになったことは評価すべきことだ。
 空想国会が示した"負の側面"は端的に言えば「不正選挙」だろう。ある者はなりふり構わず特定候補への投票を周囲にしつこく呼びかけ、ある団体は数百から千に近い票を捏造し選挙を大きく歪めた。そしてこれらの頂点は選挙管理委員会をも抱き込んだ大規模な選挙不正だろう。
 もちろんこれは所詮インターネットのお遊び、と言って仕舞えばそれまででしかない。しかし最近になり、この嘘のような不正が現実でも発生してしまっていることも事実だ。
 ロシアでこのほど行われた大統領選挙では、初めてインターネット投票が実施され、それらを含めてプーチン大統領が圧倒的な支持を持って当選したという。
 もちろん、不正の事実については明らかになってないが(社会の圧力で当選した可能性もある)側から見れば明らかに不正選挙で当選を確実にしたと言ってもいいだろう。
 そして恐ろしいことに、インターネットで"プーチン 不正選挙"と調べると、さも当然かのように「プーチン不正選挙は西側のプロパガンダ」と唱えるアカウントをとても沢山見かける。
 空想国会における不正選挙では、不透明な票で当選した政党や候補が「あたかも正当に選出された」かのようなメディアによる世論付けと共に信任を勝ち取った。つまり側から見て明らかな不正だったとしても、当時内部にいた人からすれば、それは正当だったかのように誤認した事例が頻発していたのである。
 そういう点では、あの空想国会で行われた数多くの不正選挙の限りは、結果として政治リテラシー・選挙リテラシーの重要性を示し、かつメディアによる世論工作がいかに簡単に可能かを証明したのではないか(もちろん、ネットコミュニティであれ、このようなことは当然許されることではない)。
 空想国会とは何だったのか。インターネット上に築かれた砂上の楼閣の正体は、結局のところ政治というゲームがもたらす負の側面が如何に容易く出現し得るかを端的に示し、インターネット上における"模擬政治ゲーム"でさえも泥臭いものであるという事例を示せたというところに価値があるのかもしれない。
 あの砂上の楼閣が崩壊してから1年が経とうとしている。

実話KUSOタブー

社会不適合者のための大衆紙。

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